成田でも羽田でも帰国してまず始めに空港でカレーライスを食べます。
日本の味、「カレーライス」。印象は「うまい」より「安い」です。
空港プレミアムが上乗せされても、その価格は諸外国と比べると安く感じるのです。
この4月で日銀が導入した量的質的緩和が2年を迎えます。
ある程度わかっていたことですが、資産価格などに影響を与えたと評価する一方、
2%の物価安定目標の到達には力不足だったと言わざるをえません。
なにより、現場感覚として、実体経済に好影響を与えている様相がまったくないのです。
実質的な物価の上昇を中堅小売業から感じることはできません。
資産価格については、
為替の影響から、日経平均が、年度内20,000円超えは難しいものの上昇を続け、
都内の不動産も高騰を続けております。
湾岸エリアにおける新築マンションの抽選は倍率が20倍にも達するケースもあるようで、
ローンの審査をパスしたにもかかわらず、抽選に外れ取得にいたらなかった話も聞きます。
なるほど経済指標やごく一部の分野の価格推移からは国内の景気回復ぶりがうかがえます。
物価の安定目標については、
原油価格の下落という言い訳材料があるため日銀の不信任には至っておらず、
また、円安によって輸入物価が押し上げられる上昇率の水準は、
一度為替レートが安定してしまうと、今度はマイナス方向に効いてしまうため、
非常に不安定で危険な状況にあると評価できます。
90年代半ばから日本は自然利子率がゼロ、リーマン以降はマイナスに落ちいっています。
市場の実質利子率が自然利子率よりも高いとデフレ均衡に行ってしまうのですが、
いまの自然利子率はマイナス0.5%程度、市場の実質利子率が自然利子率よりも低いので、
まだ良い均衡に行ける余地が残っておりますが、
インフレ期待が下がり、自然利子率の方が低くなるとデフレ均衡に逆戻りしてしまうのです。
そのような状況下、日銀がマネタリーベースの増加率を加速させることが予想されるので、
一時的に円高にふれている為替は、再び円安へと向かい、経済指標は良化していくでしょう。
アメリカ経済を見ても、6月、9月が難しくても、FRBが10-12月期に利上げを実施すれば、
円安の要因になること、間違いありません。
そこで真の意味での物価上昇があるのかどうかは、見当もつきません。
ただ、モノの「値段」は、そもそも中央銀行の政策によって決められるべきでしょうか。
確かに物価の安定は中央銀行の金融政策の最も重要な目的だと言えます。
しかし、「値段」は売る人と買う人の「約束」です。
価格設定(プライシング)はメッセージです。
まず、売り手が、商品サービスが何を大切にしているかメッセージを決め、
価格に意味や意志をこめて買い手に約束することによって「値段」は決まるのです。
裏を返せば、価格に対して、売り手の責任をもった約束と説明が必要なのです。
価格設定には責任がともなうのです。
このように、売り手と買い手のコミュニケーションによって、値段が決められ、
その結果の「物価」であれば、政策によってあえて上昇させる必要はないように思えます。
政策によってつり上げられた価格はやがて崩壊するリスクを内包しているようにも思えます。
売り手は、自信と勇気をもって、責任あるメッセージを送るべきなのです。
もう一度この責任の認識をすることが、緩やかなインフレを築く一歩目なのではと
思わずにはいられません。
願わくば、「安い」より「うまい」というメッセージを受け取りたいものです。